2003年。息子が生まれた年に祖母が買ってくれた真っ赤な木馬。祖母は他界し、息子はもう木馬にまたがることができないくらい大きく成長したけれど、スッとしたお顔立ちで頑丈なドイツ生まれのこの木馬を捨てるなんて私には考えられず、今は私の部屋で生息しています。
「そうだ思い切って色を変えて、個展の会場でインテリアとして活躍してもらおうじゃないか」そう思いたち、こうしてきれいなピンク色のペンキを塗って生まれ変わらせました。
カゴバッグに吊るしているものはフォークとスプーンの形をしたカトラリーチャームです。
近所の公園の木の枝にひっかけてみました。
カトラリーチャームはバッグにつけたりクリスマスツリーのオーナメントのように使ってもいいし、
壁に一本だけ吊るしても華やかなインテリアになります。
ちなみにフォークは形が面白いからか、スプーンよりも人気があります。
ですので展覧会ではフォークの方を多めに作って展示します。
「材料のお話」
スパンコールとベルベットのリボンの手持ちが少なくなってきたので買い足そうと、大好きな手芸店へ。
そこは、選りすぐりの手芸材料を一粒、少量ずつから販売してくれる
札幌には珍しい個人経営のお店なのです。
店主に「少し大きめのスパンコールはありますか?」と訊ねると
「あー最近あんまり大きいのは流行してないから入ってこなくて…あ!今出してないけどあったわ!」と言って
ストック棚からたくさんの大きめスパンコールを何十種類も出してきてくれました。
四角いの、細長いの、プリングルスみたいなボーダーの彫りが入ったもの…
変わっていてあまり売れず、メーカーでも今後作らないという
珍しいスパンコールが私には全部宝の山に見えました。
そこから店主としばし「手芸雑談」をさせてもらって。
そのお喋りから強く思ったのは「良いと思ったものは迷わず買っとけ」ということでした。
気に入って選んだ小さなビーズやスパンコール、リボン、生地などの材料が
そのあと何年も私の創作活動を支える大事な名脇役になるのですから。
それにしても、ここ数年で急速に日本中から良い手芸店が無くなったり
お店側が高価で個性的な材料を仕入れなくなってきたと感じます。
作家は「この材料じゃなきゃ」という強いこだわりを持って制作をしている人が多いと思います。
私も、愛用していたビーズがメーカーでもう生産されなくなってしまい、
作りたくても作れなくなったアイテムが2点ほどあります。
材料あっての作家活動です。
素敵な手芸店やバイヤーの人たちに今日も感謝しながら
大切な一粒のビーズを針に通し、ミシンで生地を縫い続けていこうと思っています。
写真は手芸店からの帰り道に通った大通公園の薔薇の花です。
「サマーメモリーズ」という洒落た名前がついていていました。
あの暑かった夏を過ごした秋の始まりに最後の力を振り絞って咲くきれいな薔薇。
私の目には少し切なく映りました。